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2009年 02月 16日 ( 1 )   

本番道中記 2/2 移動編(byよしぞう)   

やっとよしぞう原稿があがり、こじろう検閲も通りましたので掲載します。超長いです。

* * *
 午前校の試験終了時刻、再び最寄り駅に戻った私は、駅前のファーストフード店で自分の昼食のセットを注文して席を確保しました。
 バーガーは脂肪とタンパク中心で脳が必要なブドウ糖を緊急補給するには不向きなのですが、待ち合わせの確実さ・スピード・寒さをしのぐ、という3点から、目をつぶることにしました。そのかわり腹7分目までに抑えるよう、「飲み物とバーガー系1つだけ」とあらかじめ話して決めてあります。

 10分ほどでこじろうから電話が。(やっぱり携帯電話は便利だなぁ)と昨日の失敗を思い出して苦笑い。
 朝別れるときは「メニューは電話で言うから」という話だったのですが、結局決められずに着いてから選ぶことに。テリヤキバーガーということになりました。
 本人希望の飲み物は「野菜○活100」ということで、一応糖分とビタミンの補給を考えたようです。(^-^)

 食べながら試験場での様子を聞くと、結構よく喋ります。塾の知り合いと会ったことで緊張がほぐれたようでした。ゆっくりしてやりたいところですが、次の試験場に余裕を持って着くことを優先して、ジュースのパックを持ってあわただしく席を立ちます。
 駅に戻ってホームに下りると、ラッシュ以上の込みっぷりです。しかもものすごい数のNバッグ。思わず目の前の駅張りポスターの言葉を心の中でつぶやきます。(がんばれ、中学受験生)

 『やや鉄』のこじろうに「先頭車両に行く?」と元気が出そうなネタ振りをしてみましたが、「いや、いい」とそっけない返事。さっきからやたらとため息が漏れます。やはり1日の結果を気にせずに今日に集中しろといっても、無理というものです。人生経験の浅い小学生が始めて迎えた大きな岐路なのですから…。
 「やっぱり気になる?」とわかりきったことを尋ねると、「試験中は集中できたんだけどね。試験が終わっちゃうと、やっぱ気になるよ」と素直に気持ちを言葉にしてくれました。本当は自分の足で確かめに行きたい、この目で確かめたい。そんな気持ちがどんどん溢れてきています。だけど午後は押さえの学校の中では親子で特に気に入った「押さえの本命校」の試験。しかもこじろう得意の算理2科目受験という、逃すことができない日程なのです。
 気持ちを切り替えて午後の試験まで全力で取り組んで、そしてそれが終わったら結果を知らせる。事前の話し合いでは本人も納得していたのに、その場面になってみると、どうしても気がせいてしまうようです。
 私としても伝えておきたい思いはあったのですが、(今話しても、着くまでの間にやっぱり不安にかき消されてしまうだろうな)と考え、今は気を紛らせて落ち着かせることにしました。

 乗換駅のホームで、飲み残しのジュースと即燃焼系のバナナを食べさせ間を繋ぎます。とりあえず「すいているから」とホームの端まで歩き先頭車両に乗ると、目の前にもNバッグの親子が座りました。きっと同じ学校を受験した帰りです。そちらの親子はコンビニ袋に入ったおにぎりとジュース…、やはり午後受験に向かう途中でしょうか。「行き先おんなじかもね」こじろうにささやくと、「かもね」と返事は返すのですが、やっぱり上の空。何度もため息をつきます。昨日の試験直前の緊張とはちょっと違う、でももしかしたらそれ以上の緊張に飲み込まれているようです。

 ここでちょっとしたハプニング。駅のホームでこじろうが食べたバナナの皮とジュースのパックは、ゴミ袋を持参していなかったので私が手に持っていました。それを持ち替えようとした途端、残っていたジュースのしずくがパックから私のズボンにポタポタとたれてしまったのです。あわててハンカチを取り出してもたもたと拭いていたら、目の前に座っていたNバック親子のお父さんが、「これどうぞ」とコンビニ袋を渡してくれました。ふたつあったお弁当の袋をひとつにまとめて下さったんですね。多分温かいものとつめたいものを分けて入れてあったはずなのに…。
 お礼を言ってありがたく使わせていただきました。大変な進行のさなかだというのに、このように自然に目の前のドジ父に手を差し伸べることができる。本当に気持ちが温かくなりました。直接お返しはできませんが、私もどこかで誰かに、同じように自然に助け合いができる自分でいたいです。横にいるこじろうにも、そんな思いは伝わってくれたでしょうか。

 とんだドジのおかげで、あっという間に下車駅となりました。かえって気持ちが紛れてよかったかもしれません。駅に降り立ち時計を見ると、丁度集合時刻の1時間前。昼食をファーストフードで済ませたおかげで、逆に時間は少し余り気味です。「これなら、こっちの駅に降りてからゆっくり食べられたじゃん。」商店街の定食屋さんの前を歩きながらこじろうはちょっと不満気。食べている間は気が紛れるから、なるべくゆっくり食事をしたかったのでしょう。しかし、いくらなんでも 2:45 始まりの試験で2時過ぎまで食事をしていては、血が胃腸に下がって頭は回りません。早めに軽い食事を取るというのは、仕方ないところではあります。

 昼過ぎの商店街は穏やかな日差しにつつまれ、学校に向かう受験組の親子がちらほら混じってはいますが、普段どおりの買い物客でにぎわっています。住民自身が地元を愛しているからこそ今も残っているのであろう、小さな商店が身を寄せ合う長い商店街。そこを友達同士楽しそうに語りあいながら歩いてゆく、カジュアルな格好をした大学生たち。学校見学のとき私がとても気に入った、学生のいる街の風景が、今日もそこにあります。もちろん今日は受験当日。制服を着た中高生の姿は見えませんでしたが…。

 そんな商店街が終わりに近づくころ、とうとうこじろうがこんなことをつぶやきました。「あ~ぁ、なんでオレこんなところ歩いてるんだろう…」 こじろうの気持ちは、完全に次の試験から離れてしまっています。私は立ち止まって、今ここで思いを伝えることにしました。

 道端によって腰を落として片膝をつき、目線をこじろうより下にします。上から目線で話したくなかったのです。こじろうの両肩に手を添え、少し上目遣いで伝えます。
「ねぇ、こじろう。君はなんでここにいるの? よく考えてみて。」
「これから向かう先はどこなの? 君が気に入って、『この学校行ってみたい』そう思ってる学校だよね。」
「そんな気持ちで受験しちゃっていいの? 失礼だと思わない?」
こじろうは黙って私の声に耳を傾けています。自分でも (これじゃいけない) そう思っていたのでしょう。
「受験ってのはさ、『私この学校気に入ってます。この学校に入るのに全力を尽くします。入学したら精一杯充実した学生生活を送ります!』そういう気持ちを形にするものでしょ。」
「何で『特待狙え』なんて言ったと思う? 確かに第一志望より偏差値的には下だけどさ、『だから楽勝大丈夫』なんて気持ちで受けて欲しくないからだよ。自分が気に入った学校でしょ。全力で試験に向かって『この学校に本気です』って、きちんと伝えてきて欲しいからだよ。」
「半端な気持ちで試験受けるのはやめようよ。本気でしっかり前見て行きなよ。悔いは残したくないでしょ。」

 そんなこと言われても、それですべてを簡単に切り替えられるものではないでしょう。それでも伝えておきたい…。そんな気持ちでした。(この学校に通うチャンスを自分の意思で掴んでみせる) そういう思いで試験に臨んで欲しかったのです。こじろうは「わかった」とだけ短く答え、黙々と歩き出しました。そしてそれから学校に着くまでの間、一度もため息をつきませんでした。色々思うところはあるだろうけれど、私が伝えたかった気持ちは汲んでくれたようです。そんなこじろうと並んで歩く私は、(きっともう大丈夫。そして昨日もきっと…)という祈りにも似た気持ちに満たされてゆきました。受験という壁に立ち向かって、こじろうがひとまわり大きくなったのを感じました。

 志望校前の前には交通整理の人が立ち、受験生親子が次々に道を渡り学校に入ってゆきます。私たちはそこを素通りし、少し行き過ぎたところにある、向かいの大学の裏門のところまで行きました。「中高はグラウンド狭いから、陸上部なんかはこっちのグラウンドを借りたりするみたいだよ。講堂も時々使うらしいし…。」中学生がいて高校生がいて大学生がいて、それが細い道の古くからの町に溶け込んでいる。そんな空気を感じて欲しくて、大学の裏門前で少し話をしました。学校指定の引き合わせがない場合の待ち合わせ場所もそこにしました。

 まだ集合時間まで40分ほど残っています。でも、気を紛らわせながら二人でそのときを待つよりも、今はこじろう一人で気持ちを作っていって欲しい。そう思って「そろそろ行こうか?」とこじろうに声をかけました。「うん、そうだね」迷いなくこじろうが答え、歩き出しました。道を渡り守衛所の脇を抜けると、もう50m程で受験会場の入り口です。今回もこじろうは、振り返ることなく会場に吸い込まれていきました。 (こうして見送るのはこれが最後かもしれないな) もちろんそれは第一志望の学校の合格を意味するとても嬉しいことなのに、どこかさびしいような気持ちで、私は校舎に背を向けて会場を後にしました。

(追記) 第三志望校合格!! 詳細は明日

by an-dan-te | 2009-02-16 07:02 | 中学受験 | Comments(7)