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武蔵の「ゆとり教育」   

麻布とJGは、中高生時代フルに自由を謳歌して好きなことに没頭し、でも自由と勝手は違うこともじんわり学んで、最後はつじつま合わせ力を発揮して大学受験はなんとかする、みたいな部分で似ているところがあると思うんですが。

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似ているのに、というか、似ているから、なのか、どうも麻布の人とは仲良くなれませんでした(^^;; 遊び慣れていて、こなれた感じがなんとなく嫌で(たぶんあちらもこちらが嫌だったのだろうけど)。

それで、意識したわけじゃないけれど、結果として、親しくなった人の多くは武蔵出身でした。

間違いなく一人残らず変人で、自分の興味分野はどこまでも深堀りしてあって、ちょいと水を向ければいくらでも語ってくれます。語り口はスマートなわけではないけれど、対象分野への情熱がこんこんと湧き出てくるような。相対していて決して退屈することがない人たちです。

要領はなんか悪いんです。自分にとって、こうすると得、こうするとうまく渡っていけるみたいなツボを押さえようとせず、それより自分の興味の対象分野への愛のほうが勝ってしまうのかなと。元彼は二浪だったし、「超東大脳の作り方」の伊東さんなんて三浪。でもその回り道すべてが、その人の深みというか味になっているような感じです。

なんであんなおもしろい人ばっかりだったんだろう…という興味で、「中学受験 注目校の素顔 武蔵高等学校中学校」を読みました。って前置き長っ。

そのように私にとってはある意味思い入れの深い学校でしたが、中身についてはほとんど知らなかったので、武蔵が旧制七年生高校としてスタートしたということも今回初めて知りました。昔、「一中(日比谷高校)一高(東大駒場キャンパス)帝大」というのが完璧エリートコースだったのですが、一高の入試が狭き門で、帝大に入るより難しかった…のだそうです。それで、一高受験をスキップできる、帝大へのバイパスコースが七年生高校。

しかも武蔵は、その成り立ちがリッチで、莫大な私財を投じて作られたものですから(そこは麻布と違う)、受験競争に巻き込まれず、設備・教材・教員に恵まれ、大学に直結する教養と学問を生徒たちに授けることができる場となることができたのです。

このように、出発点がそもそも「ゆとり」であったことは非常に興味深いことです。その後、中高一貫校に変わったり、いろいろ時代が移り変わる中ではやはり、大学合格実績が求められる風潮と、武蔵の教育の理想を貫きたいと思う気持ちが、ぶつかり合ったりしていた(している)ようですが。

武蔵の教育は、とにかく「本物」に触れるということ。「山上学校」と「海浜学校」も伝統的に続いていますが、ふだんの授業の中でも、あえて無駄に見えるルートを地道に辿っていくようなことをする。

そうやって「本物」に触れることは何をもたらすのか、ということは必ずしも明らかではないんだけれど、ずーっと種を撒いていく。発芽しない種のほうが多くても、それはそれ。「山上学校」ではたとえば、自然が観察できるとか、足腰が鍛えられるといった、見える成果もあるだろうけれど、それだけが狙いではない。「キミたちは、もっとのんびりしなさい。ぼーっとした時間をつくるようにしなさい。ゲームをやっているのはぼーっとしていることにはなりません。山歩きをしていたら、ときどき頭がからっぽになったでしょう。あの感覚が大事です」(梶取校長)

つまり「余白」。まさに「ゆとり」である。

基礎学力の土台があって、本物に触れる教育があり、それを表現・ディスカッションさせる場があって、それをまったり醸成していくゆとりがある。

「自調自考」は自動的に、あるいは掛け声だけでできるものではなくて、周到に準備された…短期間で考えて作られたものではなくて、伝統の中で空気が育てられてきたことによって実現する場があって、支えられ育てられるものである。

そうやって、ああいうおもしろい人たちが育ったのだな、と思うと、「教育」というものに対する示唆が非常に多く含まれていることが感じられる。

ただ、こういう真のゆとり教育というのは、いい人材(生徒も先生も)が集まっていないと、よい面が十分に出てこないものなので、今の武蔵は昔の武蔵とは違う難しさを抱えているとも言われている。この本を読むと、武蔵も「変わらないために変わりつづけます」ということで、教養・学問のためにも、大学受験のためにも必要な基礎学力の強化を含めて、昔より面倒見よくやってみたりといろいろ試しているようだ。

改革がうまくいって、魅力的な人材を輩出し続けてくれたらいいな…と思っています。

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by an-dan-te | 2013-10-07 13:09 | 中学受験

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