私の愛読書: 「パリ左岸のピアノ工房」   

我が家にあるピアノは、ヤマハ製のごくふつうのアップライトの中でも、中の下くらいのランクのものですが…

「量産品」とはいっても、その意味するところはエレクトーンの場合などとは違います。

同じ型番のピアノでもそれぞれ違う音、違うタッチになるし、メンテナンスによって音は良くも悪くもなる。我が家のピアノは、結婚するときに母からお祝いとして買ってもらったもので、20年経っているわけですが、調律師さんによればそのころのヤマハは今より人手による工程が多かったようで、現在の新品より個性があるそうです。

「ピアノには個性がある」…これが、ピアノという楽器の魅力の中核をなしていることは間違いありません。クラビノーバくんも我が家では(特にまたろうの音楽導入期にあって)とても役立ってくれたものなのですが、愛着という点ではピアノの足元にも及びません。

音や弾きやすさにこだわりがあって、いつも上手な調律師さんを呼んでいるのと、あと置く場所の状態も比較的ピアノに合っていること、弾く頻度が多すぎず少なすぎず、などのいくつかの条件が揃っているのだと思いますが、元々のピアノも「当たり」だったようで、このランクのピアノとしてはめずらしいほどの弾きやすさと音色に育っています。

「パリ左岸のピアノ工房」は、アメリカ人の物書きがパリに住み、謎めいたピアノ工房に出会ってピアノの魅力にとりつかれていく様子を綴ったエッセイ風の本です。音楽の専門家ではまったくなく、大昔、子どものころ、ピアノを習ったことがあって…素敵な先生もいたし、好きになれないような先生もいたし…ごく簡単な曲なら弾けるが、日常的に弾いて楽しむほどの技量はない人。でも、心の奥底に、ピアノに対して漠然と感じた憧れみたいなものが眠っている筆者は、まさに私の立ち位置と同じところにいるといえます。

だから、この本の出だしは、ピアノってまた弾いてみたいなぁ、子どもにも習わせてみたいし、家にピアノを置くことはできないだろうか? と、狭い家の中のスペースのやりくりを考えあぐねている、何の変哲もない光景から始まります。

それが、子どもの幼稚園の送迎でいつも見かける、ピアノの部品屋のようなそうでないような、とっつきの悪い店構えのお店(そして思い切って声をかけても門前払いされる)が気になって、いつもいつも覗いているうち、ふとした巡り会わせからその中に入って多数のピアノを見られるようになる。

実はそこは、古いピアノを引き取って、再生して売っている工房でした。筆者は、物好きなアメリカ人として、かなり閉鎖的な面もあるパリっ子の、ニッチなコミュニティーに意外にも好意的に受け入れられ、ピアノそのものと、優れた技術者でもある店の主人、そしてそこに立ち寄る人々の渾然一体となった魅力にどんどん引き込まれていったのです。

そこにあるピアノのバラエティーといったら、ヤマハ量産品の中でいう「個性」などとはケタが違います。外観から音の出方から、超高級品からそうでないものから、出身地も様々、使われ方も様々。その中から、すでに筆者の「個性」をある部分深く知りつくした店の主人が、筆者にぴったりのピアノと引き合わせてくれました。当初の予定とは異なり、小さいとはいえグランドピアノです。

筆者は始め、とても無理だと断ろうとしますが、それでもいったん弾いてしまうとどうしてもそのピアノを家に連れて帰りたくなってしまい(^^;; 結局購入。そこから、大人になってからのピアノとの付き合いが始まります。

私が、「ピアノには個性がある」を強烈に意識したのは、近所の家(こじろうの同級生のうち)にあったベヒシュタインを弾かせてもらったときでした。アップライトですが、弾き心地といい音色といい、自分がうまくなったかと錯覚するほど(^^)すばらしくて。一時間くらい独占して、弾かせてもらいましたが、ほんと幸せ~

それでまた、家に帰ってきて、いつもの自分のピアノを弾いてみると、比べてがっかりするとかではまったくなくて、むしろ、さっきのピアノを触っていたことで気づいたちょっとしたニュアンスの出し方で新しい発見があり、いつものピアノからほんの少し違う音を引き出せるような、そんな感触がありました。

それですっかり味をしめて、楽器店のフェアで「試弾会」があればわざわざ出かけていき、ヤマハ・スタインウェイ・ベーゼンドルファー・ベヒシュタイン(それぞれグランド)の弾き比べをしたりとか。試弾会は何度か行きましたが、その都度お気に入りの一台は異なります。置いてあるピアノも状態も、その都度異なりますし、そのとき練習している曲によっても感じが変わるからかもしれません。

前に音楽のセミナーを聴きに行ったとき、音大の先生で、いろんな時代のピアノを家においておきたくなっちゃった人が、七台とかのピアノをところ狭しと並べて家中がピアノで占領されている話を聞いて、まったく物好きがいるもんだと思ったけど、いやー気持ちはわかるなぁ。私も大金持ちになったらやるかも。あ、まず広い家を買ってからね。

今私がほしいのは、前回の試弾会でさわった、ベーゼンドルファーのグランド。値段も置き場所も、衝動買いできるようなものじゃまったくないから安全ですけどね。安全…いやまぁ安全だと思うなぁ…たぶん…
[PR]

by an-dan-te | 2009-05-16 08:54 | ピアノ

<< 【中学受験】勉強場所は、子ども... 【中学受験】週のリズムに乗ること >>