仲道郁代さんのコンサート   

今日は、「突然の、コンサート日和。」の続き。というか、中身の話。

もともと持っていた、仲道さんのDVD「至福のピアノ」で私が一番驚いたのは、「音を『ことば』にする」というセクション。ブラームスの間奏曲Op.118-2の演奏なのだが、ピアノを演奏するときにどんな想像をふくらませているかという実演のため、仲道さんが想像の中身を語りながら弾いているのだ。

もちろんいろいろな想いを浮かべて弾いているのだろうけど、それを口に出して語るというのは、脳みその別の回路を必要とするのに、よく弾けるなぁと思う。ピアニストはみんなこういうことができるのだろうか??

私にはわからないけど、ともかく仲道さんは、トークをすることが弾くことの集中の妨げにならないタイプなのだろう。コンサートで、曲の合間合間にも曲の解説やちょっとしたエピソードなどを語り、マイクを置いたとたんにさっと座り、座った瞬間弾き始める。私の師匠はまったく逆で、座りなおしたり、ハンカチで鍵盤拭いたり、間が長いタイプ。

コンサートの曲目は、以下のとおり。

(1) ラフマニノフ:前奏曲 嬰ハ短調op.3-2「鐘」
(2) ラフマニノフ:10の前奏曲より、第5番ト短調op.23-5
(3) ラフマニノフ:13の前奏曲より、第12番嬰ト短調op.32-12

(2) の曲は、発表会で弾いたことがある(あんまりうまくいかなかったけど)。勢いがあって、華やか。

(1) は、(2) を選ぶときに比較検討した曲で、だいぶ迷ったので印象に残っている。低いところから高いところまで幅広く使った厚みのある響きが特徴的。楽譜の最後のほう、五線譜が四本体勢で並んでいて、どう弾くの~手は二本だよ~とびっくりするけど、ちゃんと弾けるように出来てます。飛ぶけど。

(3) は、ノーマークだった。聴いてみると、繊細で、悲しいくらい美しい曲。最後、ふーっと消えてく感じがまた…

それで、この三曲を続けて聴くと、変化があってほんとうに素敵。すっかり気に入ってしまって、発表会で弾く曲はやっぱりラフマニノフか?? という心積もりをしながら聴いてしまう。

(4) リスト:愛の夢第3番 変イ長調
知らない人がいないくらい有名な曲。私も、リストの中でこの曲「だけは」弾いたことがある。演奏効果のわりにとても弾きやすく合理的にできていて、発表会などであれだけ好まれるのもわかるなぁ。仲道さんの弾き方は、とってもチャーミングで、うっとり。

(5) リスト=シューマン:献呈
これは、初めて聴いた。シューマンが長い長い紆余曲折を経て、やっとクララと結婚に至ったとき、クララに捧げたという、二人の間の大切な大切な思い出の歌曲。原曲はとても静かにしっとりと終わるところ、リストはすんごい華やか~にしちゃったんで、クララさんはとてもお怒りだったとか(仲道さんトークより)。

(6) リスト:メフィスト・ワルツ第1番
これは、逆立ちしても弾けない超絶技巧の曲。でも好きなので、楽譜は持っている(^^;; 部分的に弾いてみたりして、「なりきって」遊ぶのに使ってます(笑)

悪魔がうろちょろしてる様子から、最後ふっと消えていなくなるまで、情景が浮かぶような曲。前半の締めくくりにふさわしい迫力があり、後半のショパン (詩を元にしていたりするのに、具体的な情景やストーリーを表してはいないタイプの曲) との対比がおもしろい。

(7) ショパン:バラード第1番ト短調
(8) ショパン:バラード第2番ヘ長調
(9) ショパン:バラード第3番変イ長調
(10) ショパン:バラード第4番ヘ短調

この四曲は、いろんな演奏家のCDも持ってるし、生でも何度か聴いている。何度聴いても、いい曲だなぁ~
私が特に好きなのは(9) (10) かな。(9) はえっちらおっちら練習して、無理やりホームコンサートで弾いたことがあるけど (ちゃんと弾けたとはいえない)、(10) は旋律が込み入っていてどうにもこうにも難しい。

仲道さんによれば、「落ち葉がくるくるひらひらと絡み合うように落ちてきて、くるり…くるり…と角度によって光が当たったり陰になったり」だそうだ。これをただ曲として聴いてももちろんすばらしいんだけど、どうしても(好奇心から)どんなふうに弾いてこんな響きになっているのかを知りたくて、四ヶ月くらいこの曲を練習していたことがある。弾けるようになるとは思わなかったけど、とにかく全部の音を楽譜から並べてみて、その上でまた演奏会で聴いてみたいと思った。

その後、「生」で聴けたのは三回くらい。そのたびに、演奏家ごとに違う表現が、ほんとにおもしろい。いろんな見方があるもんだと思う。ショパンが弾くとどんなふうだったんだろうか。

仲道さんの演奏は、表情や力の入れ方など、見た目でわかる雰囲気と結果として出てくる音の表現の関係がわかりやすく、生で見て聴いて楽しみやすいと思う。プログラム構成もよく考えられていてお客様へのサービス精神に溢れている。お奨めです。

by an-dan-te | 2009-04-20 07:26 | ピアノ | Comments(6)

Commented by Yoko at 2009-04-20 14:02 x
ほう~!! アンダンテさんのピアノの世界がうらやましい♪

私はまるで音の違いがわからない人なのですが、息子の発表会を1週間後に控え、彼が弾く「幻想即興曲」の入っているCDを図書館で借りてきて聞き比べてみました。アシュケナージ、サンソン・フランソワ、クラウディオ・アラウ、仲道郁代。

続けて聴けば、さすがに少しは違いがわかるもので(苦笑)。
4人のピアニストそれぞれ、楽譜にはないことをやっていて、特に個性を主張しまくっているアラウには息子と大笑い。アメリカ的ですね…。でも、ショパン聞きながら爆笑している私たちって…

仲道さんの演奏は、4人の中で一番まじめ。さすが日本の女性(笑)。
ナマで聴いたらきっと、もっともっとチャーミングなんでしょうね。ぜひ聴きにいってみたいものです。

ちなみに息子は、座った瞬間弾き始めるタイプです^^
緊張しないらしくて、根っからのエンターティナー。将来はピアノの弾ける芸人か…?
Commented by an-dan-te at 2009-04-20 20:40
Yokoさん、
私はピアノが弾ける息子さんがうらやましいです(^^;;
またろうはここ数年の著しい進歩で「両手でアニメ曲」までたどり着きましたが、「幻想即興曲」に到達することはないです。。

ききくらべ、おもしろいですよね。
> でも、ショパン聞きながら爆笑している私たちって…
いいと思います(^^)

> 将来はピアノの弾ける芸人か…?
すばらしい~
子どもたちがピアノを習っている先生のところの発表会で、前にショパンのスケルツォ二番をジャズのノリ混じりで弾いた男の子がいたんです。単に上手なだけじゃなくて、エンターテインメント精神のある演奏、最高です。
Commented by スケルツオ at 2009-04-20 22:18 x
>仲道さんが想像の中身を語りながら弾いている
これってすごいことですよね。
私自身、今回のプログラムはどれも馴染みのある曲ばかりなんだけど、いざその曲のイメージを言葉にして・・・と言われると、全くもってお手上げです。
演奏者なりの解釈で曲のイメージを語ってもらえると、聴く側も奏者に歩み寄ってその曲を楽しめそうですね。その曲を熟知していても、あるいは全く知らなくても。。

私のiPodに入っているバラードはZimermanの演奏のもの。
今日の通勤の往復で、この曲を久しぶりに堪能しました♪♪
Commented by エレガンテ at 2009-04-21 07:42 x
仲道さんのコンサートだったんですねー。
私、彼女の繊細な音でもしっかりと立った音、ダイナミックな音でも深く染み渡る音、大好きです。横浜に住んでいたときは毎年1回は聴きに行ってました。大阪には1箇所来てくれるホールがあるんですが、気がつけば完売!
まさに、ブラームス、ラフマニノフ、リスト、と私が発表会の選曲に聞いている作曲家ばかり。うらやましい!
ラフマニノフ前奏曲OP23-7を短めの曲とあわせて2曲演奏。。。をたくらみ中
Commented by an-dan-te at 2009-04-21 12:34
スケルツオさん、
> 演奏者なりの解釈で曲のイメージを語ってもらえると、
そうですね。さすがに、語りながら弾ける人はあんまり多くないような気もするんですが、リアルタイムでなくてもいいから。

> バラードはZimermanの演奏のもの。
私は、アシュケナージとポリーニと清水和音を持ってます(^^)
Commented by an-dan-te at 2009-04-21 12:36
エレガンテさん、
> 彼女の繊細な音でもしっかりと立った音、ダイナミックな音
> でも深く染み渡る音
そうですね。説得力があって、しかも聴きやすい演奏だと思います。

> ラフマニノフ前奏曲OP23-7を短めの曲とあわせて2曲演奏
おぉそれは、指の動かない私が一瞬でスルーした曲ですね。かっこいいですよね~

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