「円周率=3」!?の余波   

かつて日能研は、ゆとり教育バッシングの広告を打ったことがある。
「ウッソー!? 円の面積を求める公式 半径×半径×3!?」というようなキャッチーなポスター。

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文部科学省に喧嘩を売ったようなこのキャンペーンの仕掛け人、高木氏と、ゆとり教育のメイン推進者である寺脇氏という、ほとんど宿敵同士のような対談がたいへんなごやかに行われていて興味深い本があった(「それでも、ゆとり教育は間違っていない」)。

高木氏は、この「3」のいきさつについてこう述べている。「あれはね、ウチの教務スタッフが、茶飲み話でしたんですよ。「小数点以下2位の計算がなくなっちゃう。だから3.14も使わなくなるんじゃないの」という話からです。みんなで調べてみたら、使わないとは書いてないけど、使えなくなるよねと」

つまり、学習指導要領に「円周率=3」と書いてあったのではなく、書かれていたのはあくまでも計算力としてどこまでを求めるかというラインの後退…でも、結果的に3.14計算ができなくなりますね、という、ある意味ちょっと姑息な煽り方をしたコピーだったのだ。

高木「文部科学省の方とお会いするたびに、「高木さん、あれはミスリードだよね」ってよく言われましたよ(笑)」
寺脇「文部科学省の人が今頃そんなこと言ってるの? 当時はぜんぜん言い返せてなかったじゃないですか。陰で言っても仕方ないよ。だらしがない。」

実際、わが家には三人の、ゆとり的には少しずつ違う世代に属する子どもたちがいるけれど、円周率=3という習い方は誰もしていない。ただ、3.14計算を「手で」するのは煩雑だからということで、そのへんを扱うときには電卓を配ったりして授業していた。

円周率=3と教えてしまうことと、3.14を教えたうえで、計算は電卓でさせるのはけっこう大きな違いだ。3だと誤差が大きすぎるから…というよりは、3しか印象に残ってないと、なんだかそれでよかったような(ちょうどの数だったような)誤解を招きかねないからよくないと思う。3.14といえば、「なんでそんな半端なの?」と当然思うし、誰かが「3.1415926535…」などと得意がって暗唱を始めたりして、とにかく円周率という数値が、言っても言ってもいい終わらなくて、暗記がギネスに載っちゃうみたいな半端すぎる数だってことが印象に残る。無限って、ほら、ロマンでしょ。

だから円周率云々というのも小さな話というほどではないんだけど、でも、やっぱり実はゆとり潮流の本質は、計算力としてどこまで求めるかの後退のほうだったりするんじゃないかと思うのだ。

ゆとり教育の目指しているものの中身は、誰も反論できない、プラスのことだ。実地の体験を重視したり、それを表現したり、議論したり、そういう力が重要であることは当然である。土曜日の学校がなくなって、家庭や地域に子どもが帰されたことだって、それはそれでいいことだった…少なくとも、いいことにつなげられる可能性があるゆとりだったんじゃないだろうか。

でも、そういう「いいこと」に道を譲るために時間を削られた、「読み書きそろばん」的な部分が、もちろんそっちだって「どうでもいいです」と主張する人はいないんだけれど、「そんなことをがりがりやらせるより生きる力が大事」的な流れで、ちょっとトーンダウンして、3.14は電卓で計算してもいいじゃん、というような流れになってしまった。

日能研がゆとり教育バッシングしたときの真の意図がどこにあるか知らないけれど、少なくとも、公立行ったら学力が危ないよ、ウチに来て中学受験しなさい、という商売上の意図は含まれているだろう(^^;;

それはともかく、結果として、この騒ぎの中で文部科学省が「指導要領は最低基準である」ということを明らかにして、それまでの「これから逸脱したことをやっちゃいけない縛り」みたいに扱われていた風潮から脱却したわけで、日能研の営業上の都合とは別に、けっこう大きなイイ仕事した、ともいえる。

実際に世の中は脱ゆとりってことで、指導要領の中身も行った分まただいぶ戻った(まことに忙しいことだ)。けれど、コツコツと基礎学力徹底のための反復練習をするというようなカルチャーは、いったん失われるとそんなに簡単に戻ってこないので、小学校に土曜授業が戻ってきてもやっぱりそう簡単に分数・小数がわからない(扱えない)中学生は減らないような気がする。

そして日能研さんは引き続き、塾+私学でしっかり学力安心なコースがあるよという本業に邁進するわけだけど。ほんとは公立小をふつうに卒業した子にしっかり基礎学力がついているというような日本になってほしいよねぇ。

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by an-dan-te | 2013-09-17 13:01 | 中学受験 | Comments(10)

Commented by 21vertex at 2013-09-17 17:03 x
その辺の小学生(多分中学生でも高校生でも)に円周率って何ですか?と問うと、ほとんど3.14と答が返って来ます。そもそも円周率とは円周の長さと直径の比(すべての円は相似なので、これは円によらない)、ということをきちんと答えられない人がほとんどです。円周率の定義があって、それがだいたい3.14ということなんだけど。用途によって3を使うこともあれば3.14を使うこともあればπを使うこともあるわけなんですが。文科省の目指したところは多分そんなところだろうと思います。きちんと本質を理解させることに授業時間を割き、実際の計算練習は家庭学習(宿題)に委ねる、と。
でもそうはならなかった。円周率の値がどのくらいであるかということと、円周率の定義の区別がついてない。数学の得意な子とその他大勢の違いって、多分その辺から差がついているんですね。定義があって、従ってこの定数はこの値だという、概念の二重構造を意識しているかどうか。
ちなみに杉浦光夫氏の教科書によると、ヨーロッパ諸語には円周率に相当する単語は存在しないそうです。(もちろん、πという表記はある)ということは欧米人の方が定義をすっ飛ばして、π=3.14としか思ってない人が多いのかも。
Commented at 2013-09-17 23:44 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by gura at 2013-09-18 00:44 x
この件は何年も前に気になって、色んな先生に聞いてみたことがあるんです。私が質問した先生は皆さん、3・14・・・で教えている。ちゃんと丸くなるか実際やってみている。3だとあんまり丸くならない。文科省は色々変えてくるから・・困る。そのたび仕事が増える。大事だと思うことは、教科書に無くても授業でします。子供たちのため。と言う人ばかりでした。とりわけ私学は熱心で、ゆとりとか関係なさそうでした。現場は結構あついんです!という感じがしました。

でも私の知っている先生がたは熱心だから。ゆとり育ちじゃないですし^^;

ちなみに家庭教師した子達は、πを習うと喜びました。楽なんですって。
Commented by 計算機どう思います? at 2013-09-19 09:39 x
海外で子育てしている友人によると、かなりの欧米・アジアの学校では高校生ぐらいから数学にテキサスインストゥルメンツの高機能電卓が導入されるそうです。私は使ったことないのでわからないけれど、式さえきちんとしてれば計算ミスは撲滅されるってこと?(なんか腑に落ちない気分ですが)
日本では学校のテストにせよ、大学受験にせよ計算ミスは致命的な失点につながるという認識ですが…
理系のアンダンテさんに伺いたいのですが、高校まですべて手計算で育った学生と、高機能電卓で育った学生とその後、大学に入り専門的勉強をする上で違うと思いますか?
Commented by an-dan-te at 2013-09-19 12:58
21vertexさん、
そうですね、3.14計算ができるできない以前に、そもそも円周率ってなんですかという。。

> きちんと本質を理解させることに授業時間を割き、
> 実際の計算練習は家庭学習(宿題)に委ねる、と。
ところがむしろゆとり教育が進むほど家庭学習もドリル系から離れる傾向だったように思うんですが、なんかそのへんに理念と現場の乖離とかあったんでしょうかね?

> ヨーロッパ諸語には円周率に相当する単語は存在しないそうです。
えぇぇっ(o_o) 不便じゃないの??
Commented by an-dan-te at 2013-09-19 13:01
***(2013-09-17 23:44)さん、
うん、だから「目指しているもの」はプラスかもしれないけれど、実際にプラスになるためにはえんえんと前提条件がいるわけですよ。少なくとも、「基礎学力」とか。

公立小学校の場では、調べたり議論させたり資料作って発表させたりするより前に、まず陰山式的に「読み書きそろばん」徹底したほうが前進できそうな気がするんですけどね。
Commented by an-dan-te at 2013-09-19 13:05
guraさん、
とにかく、指導要領は「下支え」「これ以上はやってください」だということがはっきりしたので、先生の裁量でプラスするのはありなんですよね。

> 現場は結構あついんです!という感じがしました。
あとは、先生の実力と熱意が試されますね…

小学校の先生でも、「今の教科書だと、都道府県名を覚えさせていないのに各地の産業とか出てくるんです。無理でしょう? だからまず、都道府県は覚えてもらいます!!」っていってた方がいますよ(^^)
Commented by an-dan-te at 2013-09-19 13:10
計算機どう思います?さん、
高校で導入するんですね?? 高校だとあまり数値計算って雰囲気じゃなくて、電卓がほしいシーンというのもあまり思い浮かばないんですが、もしかして高機能っていうのは、文字式の計算もしてくれたりするんですか?

…うーん、どうなんでしょ、使い方にもよると思うんですけど、計算ができるかできないか(というか、やっているかやっていないか)で、考え方の傾向とか、考えが及ぶ限界とか、発想の豊かさって変わってくると思います。

「ご冗談でしょうファインマンさん」とか読んでると特に思うんですが、計算とか数に強くなかったらファインマンさんじゃなくてなんか別の人だと思います(笑)
Commented by セロリ at 2013-09-19 16:22 x
>あとは、先生の実力と熱意が試されますね…
激しく同感です。

パセリの通う公立小では、
算数を到達度別クラスで教えるのですが、
先生から「繰り返し練習し定着するためのコツ」
だったり、「算数のノートはどう書けばいいのか」
だったりのテーマで定期的なプリントが出ます。
また、担任の先生も「必要なので、都道府県マスターさせますので、ご家庭でもご協力を!」って
保護者会で宣言してくれます。

本当に多忙な先生方の「情熱」でパセリの基礎学力は支えられているわけで、
せめて家庭で定着させねばと思う次第です。
Commented by an-dan-te at 2013-09-20 12:18
セロリさん、
パセリちゃんの先生方、がんばってますね(^^)
都道府県名は知らないと困りますよね。
またろうは今でも怪しいらしい(o_o) やばい

先生のせいじゃなくて、そこまで余裕がなかったからで…家庭と本人に。
> せめて家庭で定着させねば
ここが大事ですよね(-_-;;

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