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第11首: 今来むといひしばかりに(助動詞、有明の月)   

今来むといひしばかりに長月の
  有明の月を待ち出でつるかな

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現代生活の中で「月」の占めるポジションというと、ほんの添え物というか、たまに目に留まって「あらきれい」くらいなのですが、スイッチひとつで明かりがつかない時代には、とにかく月が出てるかどうか、これが生活上の重要ポイントでした。

百人一首の中でも、「月」は頻出ですね。文法事項とは違うのですが、月の常識がどんなだったのか少しはわからないと、意味不明になってしまいます。

「有明の月」というのは、言葉どおり、明け方になっても月が空に有る(残っている)ということです。

まんまる十五夜お月様(望月)は、日が暮れるころに東の空に出てきて、夜中いっぱいかかって空を動いていき、明け方には西に沈んでいくわけですね。その月が欠けてくるとともに、月の出が遅くなり、つまりは明け方にまだ西の空に月が残っている状態になります。

九月(長月)の16日以降の月(有明の月)を「待ち出でつるかな」ということですが、一晩待っていたら明け方になっちゃったのか、ずーっと待ち暮らしていたら秋になっちゃったのか、ちょっとはっきりしません。

藤原定家さんは後者の説を取っているそうですが、私もなんとなく、秋になっちゃったのかなと思います。そのほうがドラマチックで、おもしろみがありますよね。それに、「待ち『出で』」というので、待っている間にずっと一晩中見ていた月が残っているというよりは、だんだん秋らしくなって九月の有明の月が出ちゃったじゃないのよ、というふうに取りたいと思います。

文法の話に戻りますと、この歌には助動詞が三つも出てきますね。
「今来『む』と」…意思「む」終止形。引用の格助詞「と」に続いているので終止形です。
「いひ『し』ばかり」…過去「き」連体形。なにせ「過去」を表す助動詞ですから頻出ですけど、「き(終止形)」「し(連体形)」「しか(已然形)」と顔形ががらりと変わっちゃうところが曲者。これは覚えてください。「き・し・しか」。
「待ち出で『つる』かな」…完了「つ」連体形。終助詞「かな」には連体形が接続します。

ところでこの歌の意味上の「へそ」といえば助動詞より、副助詞の「ばかり」です。
「(あなたが)言ったばかりに」
…「ばかり」は現代語でもありますからこのままでも意味はわかりますね。でも
「(あなたが)言ったばっかりに」
…このほうがぴったりかな(^^;; だって、秋まで待っちゃったんですもの、どーしてくれんの。って感じ。

もっとも、この歌を作った素性法師は男性です。女性の立場で詠んだ歌です(ネカマ?)。

[訳読]
すぐに来ようと(あなたが)言ったばっかりに、(毎晩まいばん待ち暮らしていたらとうとう)九月の有明の月が出てしまったなあ。

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by an-dan-te | 2013-05-14 13:12 | 中学生活 | Comments(2)

Commented by gura at 2013-05-14 23:19 x
そんなに待たないといけないなんて・・・つらいですね。私だったら・・・待ってる間は忘れて趣味でも楽しむかなあ。それで、あれ、もう有明の月出てるよ~って言うんです。

偶然、高校のときの古典の先生に出会いました!びっくり、タイムリー。先生に、最近百人一首が楽しいですってご報告。アンダンテさんのブログで引き寄せられたのかな^^
Commented by an-dan-te at 2013-05-15 22:37
guraさん、
まぁこれは、架空の歌ですから、大げさかもしれませんが、でもあの時代、恋にとりつかれたら、なかなかそれから気をそらすような趣味とか難しいかもしれないですね(^^;;

> 偶然、高校のときの古典の先生に出会いました!
おぉ。
私の人生にしっかり種まきをした国語の先生に、お会いしてみたいですね…

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