「いじめ」の起きにくいクラスの特徴   

「いじめ」を支える構造として「傍観者」の存在が重要であることはよく知られており、「その場で黙ってみているのもいじめをしたのと一緒だ」という言い方もされます。

  にほんブログ村 受験ブログ 中学受験へ←いじめの少ない学校はどこ?

ただ、個人的にはかなり違和感ありますね。そりゃ、やったヤツが一番悪いだろうって。自分も怖くて何も言い出せなかった子は、まぁそういう弱さを持った子ということではあるけど、やっぱり何かを「した」のとは違うかなと。

しかし、傍観者を責めるか責めないかはともかくとして、「いじめ」行動の安定と助長に、傍観者の存在が深く関わっていることは事実。

先日、「なぜ、人は平気で「いじめ」をするのか?」(加野芳正著、日本図書センター)という本を読んだのですが、これには、「いじめ」について、その歴史から報道から、定義、分類、対策など、基本的なことが幅広く要領よくまとめられています。「いじめ」を考える出発点としてはなかなかお奨めの本です。

例えば、「いじめ」と「しごき・制裁」「けんか」「ハラスメント」はどこが似ていてどこが違うのか、とか。「いじめ」が小学校・中学校に多くて大学には少ないのはなぜ? とか。そういう、「周辺」と比較していく手法で「いじめ」とは何かがくっきりしてきます。

この本の中では、「いじめられっ子」「いじめっ子」「観衆」「傍観者」がいじめの四層構造として示されています。「観衆」というのは、手を出してはいないけれど、周りではやし立てているなど、積極的に見ている(面白がっている)子のことを指します。

このような、「観衆」「傍観者」のあり方が、あるクラスの、いじめの起きやすさを左右すると考えてみると、私の接した事例はどのように考えられるでしょうか。

またろうが三年生になるとき、クラス替えがあり、その後はいじめ行動が急速にしぼみました。新しいクラスでは、勉強もできてピアノも弾けて、スポーツ万能、明るいリーダー気質のAくんが、多数の生徒をゆるくまとめたグループを形成していて、「ハンパをするとAくんが許さないだろう」という雰囲気があったとまたろうは言っています。つまり、何か事が起これば、Aくん自身が「やめろよ」と言うかもしれないし、また、もし別の子だけが目撃していたとしても、その子は止める勇気を持ちやすいということがいえます。次のターゲットにされるかもという恐怖が格段に減りますからね。

しかも、Aくんのリーダーシップは運動会などの行事のときにも発揮され、そのクラスは比較的早い段階からよくまとまって練習を重ね、本番でもよい成果を出し達成感を味わいやすかったということがあります。いじめなんかしなくても楽しいクラスであれば、それはやはりいじめが減るでしょう。

それに対して、JGにあった「いじめの起きにくさ」はこれとだいぶ異なるように思います。第一、そんなわかりやすい多数派グループは存在しません。みんな好き勝手に、気の合う人とつるんで過ごしています。気の合わない人もいたでしょうけど、お互いいちいち関わりません。むしろ個人主義的…!?

個人主義といじめの関係はどう捉えたらよいでしょうか。この本の中では、集団主義が崩壊して、それに変わる個人主義が未成熟であるといじめが起きやすいと書かれています。JGの人たちの特徴として、「世間がどういおうが私は私の思ったことをする(いう)」というのが強くありますが、このことは傍観者群の形成を妨げます。

つまり、誰かが誰かをいじめているシーンがあったとして、「場の空気を読む」などの、自分以外の何かを行動規範にすることが少ないのです。この本の中では「内部指向型」人間と「外部指向型」人間という言葉が使われていますが、要するに、ダメと思えば、空気を読まずにそのように発言してしまいます。

また、この本の巻末にまとめられている、いじめ解決のためのヒント(ノウハウとまではとてもじゃないけどいえない)に「一人でいられる能力」というのがあります。つるんでいないと安心できない、仲間になりたい、友だちはゼッタイ作らないといけない、という心の縛りは、時にゆがみを生じさせることになります。パシリとして使われていてもグループから抜けられないなどです。ひとりでお昼を食べる、ひとりで教室移動をする、というようなことを、本人も耐えられない、あるいは周囲の目も冷たいということになれば、むしろその強迫的な連帯はいじめの温床にもなりますが、JG生はひとりで誰かがごはんを食べていても、なんとも思わないでしょうから、居心地の悪いグループから抜けることのためらいは減るでしょう。

というふうに、「いじめの起きにくいクラス」の特徴というのはいろんな形がありうるようですが、それにしても、整理してみることができます。学校を見るとき、そしていじめが多いか少ないかを想像するとき、いじめの構造を知っていれば、多少の参考にはなると思います。

にほんブログ村 中学受験 ←ランキング参加しています。
にほんブログ村 中学受験(日能研) ←こちらも参加しています。
[PR]

by an-dan-te | 2012-07-18 13:28 | 中学受験 | Comments(10)

Commented by まる at 2012-07-18 17:37 x
とても興味深い本なので読んでみたいと思います。

私立中学や高校と違い公立中学は退学という手段を取りにくいためいじめがエスカレートしやすいと思います。
いじめる側は一種のいじめ依存症になりどんどんひどくなります。

いじめられる側は相手を殺すか自殺するまで追い詰められるので、いじめの目は早く摘まないといけないとおもいます。

いじめの原因は嫉妬なのだそうです。
家族に恵まれない、もしくは親から認めてもらっていないと感じている生徒が、そういうのに恵まれている生徒をターゲットにするそうです。

こんな悲しいことが起こらないよう祈るばかりです。
Commented by ケロ父 at 2012-07-18 18:12 x
よく「影の番長」の存在が重要とか言いますものね。
Aくんのように表に立つリーダの存在はもちろんですが、なんとなく一目置かれる存在が、どちらに傾くかというというのもかなり重要なんじゃないかと思います。
その対象が実在するにせよしないにせよ、心の何処かに畏れというか畏怖の念があれば、それが抑止力になるような気がします。
実家が檀家をやってるお寺の住職さんも、以前、そんなようなことをおっしゃってましたね。
Commented by のんのこ at 2012-07-18 19:01 x
いじめについては最近自分の中でもいろいろと考えることがありますので、その本はとても興味があります。
確かにいじめの起こりやすい雰囲気の集団、起こりにくい雰囲気ってありますよね。
本、読んでみたいです。
Commented by an-dan-te at 2012-07-19 13:28
まるさん、
なかなか「基本」がうまくまとまった本で、お奨めです。
公立中だと、どんなにひどいことがあってもその子にお引取り願うわけにはいきませんよね。私立で、そういう最終手段があることはプラスなのかもしれませんが、ほんとのほんとに最終手段ですからね…日常との境があいまいな、大多数のいじめにはあまり効かないかもしれません。ちなみに、JGには退学がありません。

嫉妬もいじめの引き金になるかもしれないし…あと、スケープゴートを求めるタイプのいじめだと、嫉妬はあまり関係なさそうです。たぶん何タイプかあるのでしょう。

いじめるほうも、いじめることに「依存」ということはありますね。いろんな面でぐんぐん成長できる時期に、いじめなんぞにうつつを抜かしていることは、本人にとってマイナスでしょう(メンタル面でのゆがみはもちろん)。
Commented by an-dan-te at 2012-07-19 13:32
ケロ父さん、
あぁ、なんとなくの「実力者」がダークサイドに傾いていたら、そりゃかなりまずいですね。

> 心の何処かに畏れというか畏怖の念があれば
そうですね。JGの場合も「いちおう」宗教系だから…と思いましたが宗教心は薄い人が多かったと思うので関係あるかどうかわかりません。宗教であるにせよないにせよ、「内部指向型」であることはいじめ防止と関係あるかも。
Commented by an-dan-te at 2012-07-19 13:36
のんのこさん、
いじめる子がいて、いじめられる子がいて、でもそれだけじゃないんですよね。クラスというフィールド全体の空気や力関係が、「いじめる-いじめられる」関係を発展させてしまうか、ぽしゃらせるかの鍵を握っているんです。

いじめのない学校なんてない、というのが定説(?)になってしまっていますが、実際はものすごく多い学校から少ない学校までが存在すると思います。
Commented by y at 2012-07-24 16:49 x
そろそろイジメって呼び方よしませんか?
この呼び方のお陰で
「犯罪を」
みな遊びって捉えてるみたいですよ?

「一番傍観してはいけない人物は教師・警察」
なんですよね。

滋賀大津の犯罪は
被害者が教育者どもや警察に相談したにも関わらず
傍観・やり過ぎんなよなどと
「無責任な発言・態度」をしたと聞いています。

「イジメ相談」だと自分の弱さを認めることになり
相談しにくいと思います。

しかし
「犯罪相談」だと
大人もやってることでしょう。

「犯罪被害」は裁判所にも訴えるし。
Commented by y at 2012-07-24 16:51 x
教育うんぬんの話以前に
日本は無法地帯なんですかね?
法治国家と名乗っていいんですかね?

これは
不正が横行する
大人の世界、会社の世界にも言えます。


たいていのイジメ行為は犯罪に該当する


刑法上の犯罪行為


 殺人罪(自殺教唆も「未必の故意」が認定されると殺人罪として立件されることがある)
 傷害致死罪
 自殺教唆罪
 暴行罪
 傷害罪
 脅迫罪
 強要罪
 恐喝罪
 強姦罪
 名誉毀損罪
 侮辱罪
 偽証罪
 誣告罪
 器物損壊罪
 窃盗罪
 犯罪の教唆(実行犯と同罪)

その他民法上の不法行為(損害賠償請求対象行為)
 無視(「あいつを無視しないとお前も・・・」は強要罪)
 陰謀をめぐらすこと
 教師や上司に事実ではない不利な虚偽報告をする。
Commented by an-dan-te at 2012-07-24 20:50
yさん、
いじめがひどくなって、恐喝事件や傷害事件に発展してしまったとき、それを犯罪と呼ぶのは当然ですね。

その手前で、たとえば数人がこそこそ話をして、ある一人のほうをチラチラ見ながらくすくす笑っているとか、誰かが触ったところをキタナイといってキャーキャー騒ぐとか、そういうのを犯罪と呼べるかというと、そう捉えることで何かがわかりやすくなるとも思えないし、警察が扱ってくれるわけでもない。

むしろそういう、学校のクラスという場で起こりやすいことを「いじめ」という言葉でくくることで、見えやすくなった、必要な対応がわかった部分もあると思います。逆もあるとは思いますが…

「犯罪」でなく「いじめ」と呼んだからといって、教師が対応しなくていいわけではないですし、相談することが弱さを認めることでもないと思うのですが、どうでしょう。むしろ「いじめ」というのは犯罪を含む、深刻な人権侵害であるという認識です。
Commented by y at 2012-07-25 16:36 x
an-dan-teさん
「人権侵害自体が犯罪」ですね。
そもそも日本国憲法の三大モットーの1つが基本的人権の尊重です。
当然「人権に関する法律」は多数に渡ります。

例えば会社内で行われるハラスメント
これも犯罪なんです。

あとイジメ犯罪で
PTSD(心的外傷)が医師診断書で出されれば
それは法的証拠となり、傷害罪として扱われます。

ただ、被害者が泣き寝入りもしくは水に流すということにつけ上がった加害者が
調子に乗って次もやってさらに次もやってと続くのは「イジメ犯罪」といっしょです。

特に日本人の文字文化・会話文化では
「横文字やひらがななどで軽い感じで気軽にすればOK」
そういう心理が働き、無責任になるのは明らかです。

だから法律用語って重々しい漢字などで表現しているでしょ?
守られなくて
重要で深刻な事態になってはいけないことは漢字で表すというのは
おそらくご存知だと思います。

<< メモチェの季節がやってきた!! 中学受験より大学受験で伸びるタ... >>