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中学受験の勉強は一年で充分!?   

本日の記事のタイトルとして書きました「中学受験の勉強は一年で充分!」という扇情的(?)なオビがついて売られている本があります。「「子供のために」を疑う」(二神能基、朝日新書)という本です。

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この著者の経歴は非常におもしろくて、中学受験塾経営を長年やったあと、ニート支援のNPO法人を設立した人です。つまり、自立に向かわない青年たちを多数面倒見ているうちに、中学受験きっかけで親子関係が壊れたというケースに多数遭遇したのを踏まえて、行き過ぎない中学受験を提案しようとしているのですね。

この本全体は、「10代の子供を伸ばす7つの知恵」という副題がつけられているように、思春期の子育てについて述べることが中心となっているのですが、とっぱなの第一章は丸ごと、中学受験の話に割かれています。

曰く、「中学受験の勉強は、「小学6年生から」で充分」。

最悪なケースというのは、親主導でがりがりやらせて「えいや」とめいっぱいのレベルの中学に押し込んだものの、本人はもう燃え尽きてて勉強する気はナッシング。ぎりぎり合格のうえ、やる気もないとくれば当然あっという間に深海魚になり、とてもじゃないけど「難関中学の名前につりあう」大学なんかは入れるわけもなく、でも本人や親の半端なプライドだけは引きずっているという状態です。例えば。

そう書いてしまうと、作られたステレオタイプという気もしますが、実際、この人が接してきた親子で、中学受験から深海魚、そして親子関係もぎくしゃくしているパターンがそれなりに多かったのでしょう。

いうまでもないことながら、中学受験のあとうまく成長したパターンだと、この人のところには来ないわけなので…

それで、この人の提案する中学受験はどういうものかというと、
・五年から、小規模塾でぼちぼち勉強を始めて
・六年で、中学受験塾に入る。
・余裕を持って入れそうな中学校に進学する。
というプランです。

確かに、その場合は深海魚になる可能性は低そうですが、それは要するに、本人のポテンシャルよりだいぶ低いところにしか行けないことが多いからといえるかもしれません。そんなに上限を狙う必要もないですけど、あまり極端に「ゆとり」だと、私学に行く意味が半減してしまいそうですが。

私の見るところ、上記のプランが現実的によいプラン(ほどほどのところに合格する)として成り立つためには、いくつかの前提があるように思います。
・この人の経営していた塾は地方(愛媛県)にあり、東京圏とは事情が異なる。
・小規模塾というものが、本人の適性や特徴を見て、きめ細かく指導ができることを仮定している。
・短期集中でガッツを発揮する、がんばれる子であることを仮定している。

あと、中学受験塾に六年から入塾できるか、できてもついていけるかというのも難しいところだと思うのですが、この本には
「(周囲はもう総復習に入っているということで戸惑いもあるだろうが)しかし、私の経験から言えば、その戸惑いや緊張感が、子供の潜在的能力を引き出す場合が多い。(中略)前半こそ焦りもあって暗い表情をしていますが、夏休みに入る頃くらいから、成績の上昇とともに表情がリアルに変化してきます。」
そして成績がグンと伸び、伸びを体験することでさらに勢いがつき、志望校中学合格後も順調に伸びていく場合が多い。というのがこの著者の主張です。

どうですか?

私は、うーん、、趣旨としてはわかるけど、状況により、子どもの能力と性格により、合わないケースのほうが多いように思います。あとね。後伸びするための条件には、「勉強をやりすぎず、嫌になっていない」ことのほかに、「勉強が少なすぎない」ことも重要だと思うんです。

つまり、中学に入ってからの勉強が楽しい、そしてやったら伸びる、というためには、基礎学力、基礎知識、そして勉強をすすめるコツというものが必要ですから。中学受験勉強をじっくりしっかりしたからこそ、その後の勉強が楽しくて身になるって面もあるんです。六年からだと、よほど要領よくできる環境と能力がなければ、突貫工事的になっちゃわないでしょうか。

ということで、この著者の提案をそのまま受け取る必要はない(受け取ることはできない)と思いますが、とにかく中学に入れればいい、というのではなくて、その後に伸びるように受験するという視点はしっかり持っておきたいですね。

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by an-dan-te | 2012-06-28 13:04 | 中学受験 | Comments(12)

Commented by ももんが at 2012-06-29 06:01 x
まさにこの筆者の言うとおりに近いかたちで通塾した長男ですが 首都圏の中受なら私がギブアップです 

わが家も地方で 当時のカリキュラムでは小6直前で社会は江戸時代くらいでした 他教科もそんなペースですから まだゆるかったですし 入りたかった中学は上には開けていたけれど 偏差値的には低かったので…

低学年からくもんに行って 半年くらい高受向けの進学塾に通った後でしたが 当初は本人としても見たことのない勉強内容とレベルに猛烈に焦ったそうです  

一時期 私学の一貫校にあこがれたこともありますが 学力的な問題として 穴がどうしても目立ち 入試でここが出されたらアウトではないか と思うとそんな博打は… というのが母の心境でした(現在の進路は 当初の本人の希望通りですが) 

私学の一貫校考えるのなら 少し慣らしてから5年生からの入塾をしていたと思います
Commented by みしぇる at 2012-06-29 09:20 x
「1年で充分」が標準的に合理的な解じゃないのは確かでしょうね。

ただ大手塾2年間でもtoo much感は残ります。コストを考えると仕方がないんだけど、もう少しスリムにしたいのが本音。

4年生時点で私立受験に迷いがない家庭はいいんだけど、迷いがある場合、とりあえず入塾しちゃうとやめる勇気が持てない確率が高いので、5年まで大手塾の通信でカリキュラム的には一応こなしつつ本当に受験するかどうか考えるというのも一案でしょうか。何せコストがまるで違うので、時間がなければ得意科目は丸ごと捨ててテストだけ受けるという使い方もできるし。(通塾してもできるけど、コストがたくさんかかってるのでなかなか勇気が出ない…)

そのように迷いに迷った挙げ句、新6年から通塾することにしたのですが、それほど後悔はしてません。3年間がっつり通塾したとしても、現時点での到達点にそれほど違いが出たという気がしないので(御三家じゃなきゃダメだという場合の話ではないので、念のため)。

でも、アンダンテさんみたいに私立受験に対して迷いがないなら、2年or3年間大手通塾コースがコストと快適さの兼ね合いでベストかなという気がします。
Commented by ぎどん at 2012-06-29 17:19 x
いやもうそんなこと言われたって…
あまりに我が家の状態からかけ離れているため
「1年ですむのが平均的かもしれんけど上ムスコにはぜーったい無理だった。
平均からがっつり外れてんだからしょーがない。」
としか思えないです ^^;; 。

こういうのって子供がどのくらい精神的に成熟してるかとか、
成熟してなくても親にやらせる技量と根気があるかとか、
まあそういうのと密接に関係していると思うので、
子供も平均から外れてるし親も並外れてヘタレなので、我が家は無理です、ハイ。
Commented by みたらしさくら at 2012-06-29 17:50 x
これは「愛媛」ってとこがポイントかと。実際、関東圏と関西圏以外ではそれほど私立中高一貫校のバリエーションがなく、高校レベルになると公立トップ校=地域一番高だったりすることが多いですから。
愛媛の場合A校と国立附属ぐらいの選択肢(まあ地方では中学からラサールの寮とかに行く人もいますが)なら、過去問も2校だし、あまり一生懸命になりすぎてだめだった時には立ち直れないので、ほどほどのお金とパワーをかけ、だめなら公立中から県立一番高を目指すさと切り替えるのが正しいと思います。
偏差値1違いにさまざまな校風の学校が選べる首都圏とは事情が違います…
長期間通塾すればいいというもんではないけれど、やはり塾のカリキュラムとしては新五年生からはスタートしないとキャッチアップするのがつらいと思うし、何も最初から不利な条件で戦う必要はないわけですから。心配しなくても通塾してても2年間ずっと受験どっぷりの子なんてあんまりいなくて(いたらかえってすごい)みんなその子なりに適当に息抜きしていると思います。
Commented by an-dan-te at 2012-06-29 21:08
ももんがさん、
地方だと、入り口偏差値の下限はそんなに高くなくて、でも天井知らずという学校がありますよね。そうすると、受験の戦略も当然ニュアンスが変わってくるのかと思います。この著者の塾は愛光メインなのかな?

> 当初は本人としても見たことのない勉強内容とレベルに猛烈に焦ったそうです
そうですね~
高望みはしないにしても、新六年から日能研とかサピとか入ったら大変だと思います。塾がそのようにできてないので。
Commented by an-dan-te at 2012-06-29 21:13
みしぇるさん、
スリム化したいというのはあるんです。
でも、新五年から通塾のこじろう受験を経て、「もうちょっとゆったりやろう」というのが「その前にちょっと準備をして」という方向でした。つまり薄める。方向が逆ですね。

迷いがある場合はまた別ですよね。だって通い始めたらやめられなくなってしまいますもんね。
> 新6年から通塾することにしたのですが、それほど後悔はしてません。
なるほど~
Commented by an-dan-te at 2012-06-29 21:19
みたらしさくらさん、
> あまり一生懸命になりすぎてだめだった時には立ち直れない
うーん、そうですよね。
私が(ある意味)気楽に構えていられるのも、成績が変動したらそのへんでまた見つけりゃいいや的なところがあるからで、ここに受かるかさもなくば公立となってしまうならまた違う戦略をとらざるをえません。

長いほど高いところにいけるとは別に思いません。こじろうケース(新五年から)は「高さ」からいけば本人的マックスまで十分いけると思います。六年スタートはそこよりは低めになるケースが多いんじゃないかな。

> みんなその子なりに適当に息抜きしていると思います。
あぁ確かに(^^;;
Commented by an-dan-te at 2012-06-29 21:20
ぎどんさん、(順番間違えたごめん)
一年ですむのは別に標準じゃないと思いますよ。
長いのもたいへんだけど、短いのもたいへんです(^^;;
それはそれで根性と才能。うちはどっちもないや(笑)
Commented by まる at 2012-06-29 23:39 x
これは愛媛特有だと思います。
1校が偏差値70越え、他は60越え。

御三家をめざしていて不合格だと親も子供も挫折感がすごいそうです。
又、御三家に合格すると東大に行けなかった場合やはり挫折感があるそうです。
優秀なのにもったいないと思います。

愛媛だと1年でどこかの私立中学校に合格可能だと思いますが、都会の場合はもう少し時間をかけた方がいいと思います。
Commented by an-dan-te at 2012-07-02 13:35
まるさん、
地方により状況がかなり違ってきますよね。この人の本は、いいことも書いてあったけど、それからそれはいえないだろってつっこみたいところも相当あって、全体として、自分の経験を拡大解釈しすぎているようにも見えました。読み方に注意が必要な本です。

> 都会の場合はもう少し時間をかけた方がいいと思います。
都会でも、ほどほど受験をして悪いことはないはずですが、その「上」にもいくらでもいろんな学校があるとなると、つい、1年で行けるところに行くよりは2年? って思っちゃいますね。
Commented by あおいとり at 2017-03-05 11:57 x
実際に「1年受験」を経験した者としては、結論からいうと
「ポテンシャルに見合った着地点に行くのはほとんど不可能に近い(すくなくとも標準的な中学受験予備校のクラス指導では)」

それでも、予定外だったけどやむを得ず中学受験に踏み切ることにしたという場合に、なおかつ可能な限り能力相応の進学先に近づくにはどうすればいいのかというと、基本的にはクラス指導の予備校は諦めて、週2~3回程度の家庭教師で対応(週1回ではよほど学習の自立が進んでいないとペース配分が難しいです)というのがいちばん妥当なのだろうと思われます。
私自身の受験では「日曜朝のテスト+午後解説、あとは家で自習」というスタイルでしたが、4年生からならまだしも、6年生からとなると現状チェックや出題傾向の把握はできても、力を伸ばすとなるとこのスタイルではちょっと無理があったかも。

とはいえ、反面、この年代で親子の意思統一がはっきりした状況で受験を決める場合には、受験勉強に対する本人の納得度も高いことが多い(むしろ子どもから望まれて決めることさえ少なからずある)ので、親子バトルは比較的起こりにくいというメリットもあるかなとは思います。
Commented by an-dan-te at 2017-03-17 20:17
あおいとりさん、
大手塾カリキュラムは、一年間で受験するようにできてませんから、あらかじめやってあるとかでなければほぼ無理ですね。

家庭教師も、聞かれたことは答えましょうみたいなぼわーっとした人じゃ役に立たないから、スーパーな家庭教師を週何回もつけるとなると一年間でもお安くはならないかも(^^;;

本人の意思がはっきりしているというのは大きなアドバンテージではありますので、ポテンシャルを生かしきれるかどうかはともかく、かなりやれる部分はあるでしょう。

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