えせ科学と小学校教育
2011年 11月 27日
←ポリシーを語るのにえせ科学はいらない
ゲームの話のときに21vertexさんが教えてくれた、「水からの伝言」という話も、なかなかすごいです。
「水からの伝言」で検索すればずるずるずると多数出てきますから解説不要かとも思いますが、私なりに、簡単にまとめておきますと、
水が雪のような結晶を作るときに、
「ありがとう」「平和」のような良い(?)言葉をかける→きれいな結晶に
「ばかやろう」「戦争」のような悪い言葉をかける→汚い結晶に
というものです。
言葉のかけ方としては、瓶に向かって声をかけてもよいし、紙に書いて瓶に貼ってもよいそうです。
あんまりにあんまりなので単にまとめを書いてるだけで恥ずかしいですが、まぁ音楽とか何かしら「音波」の影響で結晶が変わるというならまだしも、紙に書いて貼ってもねぇ…まぁいいけど…
それで、だったとしても「だから何?」って感じなんですが、これが小学校の道徳教育に取り入れられて有名になったというか問題になったそうなんです。すごいな~。今、「なった」と過去形で書きましたが、廃れたとも限らず、21vertexさんによればまだそこらへんの学校を席巻してるんだって。
私が聞いたことがあるというほうの「ゲーム脳」は、簡易脳波計を使った研究で、アルファ波とベータ波の比率を比べると、ゲームを始めると平常時と違ってアルファ波優位になり、ゲームをやめると回復するが、長時間浸っている人だと、その回復が遅くなり云々というものです。
で、アルファ波優位だから何なのということですが、このゲーム脳を提唱した人は、アルファ波は認知症患者とかに見られる異常な脳波で、要するにゲームをやったことでアホになったことの証拠とみなしたわけです。
え? アルファ波って異常な脳波なの?? そんな話ってあったっけ、と思った皆様。いやもちろんそんなことないですよ。なんでそんな話になったのかわかりませんが。
そもそもこの簡易脳波計がいい加減なしろもので、ちゃんと脳波を測れてないという話もあるようですが、だいたい根本的に話が成り立ってないんで、測定が間違ってたなんぞは枝葉といってもいいくらいです。
私がこの話を聞いたとき、先生は確か新聞の切り抜きのようなものを手にしてその一部を読んで紹介したり、とにかくゲームのやりすぎが「脳に悪い」ことが科学的に証明された的なことをいっていました。いいたいことは要するにゲームをやりすぎるなって話で、別段おかしなところはありませんけどね。
その先生は指導力もあり人柄もすばらしく、教師としてたいへん優れた能力を持った方だったなのに、なんでそんなエセ科学の話!? と疑問に思ったものです。ゲームをやりすぎないようにという話をするのはもちろんいいんだけど、それと同時に、エセ科学を見抜けるようにすることだって教育として重要でしょう(しかもこんな初歩的な…)。
そのエセ科学、水のうんたらのほうはオカルトというレベルですが、ともかくそんなことを持ち出してしまうのってどうしてなんでしょうね。だって、言いたいことは単に
「お互い挨拶を気持ちよくしましょう」
「ゲームはやりすぎないように」
…とかそのくらいの、ごく普通な内容でしょ。何も後ろ盾なしに、ただ自分の生活実感と人生観、価値観から語ればよいことです。
ただそこまで考えてみますと、現在の小学校の先生が置かれている状況って、学校の授業の中身を考えてればいいってもんではなく、早寝早起きとか、朝ごはん食べろとか、忘れ物するなとか、ゲームしすぎるなとか、あれこれと「家庭の教育力が不足した部分」も補わなければならず、さりとて、学校に強力なポリシーもなければ、各家庭の考え方も状況もばらばらだし、第一、その学校の趣旨に賛同して集まってくれたわけじゃなし。
こんな中で、なにごとかを説得力持って語らないといけないときって、つい、そういったものに頼りたくなっちゃうってあるのかなって、ま、同情はします。しますけどね…
先生が、えせ科学を肯定的に子どもたちに語ったらイヤだ。
ってなことは思います。そもそも先生が見抜けてなかったらイタすぎるよ。
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by an-dan-te | 2011-11-27 10:45 | 中学受験 | Comments(21)
うちの長男は5年生ですが、3年生の3月位に学校のテストやプリント類を整理していたところ、「水からの伝言」のパンフレットが出てきました。
長男に聞いてみると、9月頃に「習った」とのことでしたので、時すでに遅くというか、
その直後であれば、校長先生にいやみの一言も交えてそれとなく注意するところでしたけど、
もう半年も経っているので、時機を逸してしまいました。
1年くらい前の、地域の人等に講師をお願いする学校行事があるのですが、
私はスルーしていたのですが、見に行った妻の話によれば、
「水からの伝言」の講座もあったようです。
やっぱり、半年遅れでも校長先生に注意しておけばとそのとき思ったものですが。
特に小学校の先生は中学以上と比べて専門性が低い(基本的に全教科教える関係で)ので、
科学の基本的知識に欠けている先生が多いような気はしますが、
まあそれにしても「水からの伝言」はないだろうと思いますね。
小学校の先生は、教員になってからは、「ためしてフントカ」とか「裏わざ」のような番組が科学分野インプットの全てだったりするし。
母としてのささやかな願いが、えせ科学を滔々と語ったり、逆に科学的=非人間的と、あからさまに言ったりする先生に複数年当たらないこと、なんて異常だと思うんですが、どうしようもなく。
さて、「水からの伝言」ですが・・・その話に関して書き始めたら止まらなくなりそうなんですが、長文お許し下さい。
もうご存じかもしれませんが、もともと、この話を学校の先生が取り上げるようになったのは、TOSS(Teachers Organization of Skill Sharing)という教師の情報交換団体がこの話を道徳の授業用に推奨したことが発端だったようです。
うちの高3息子が小3のとき(10年近く前?)に、理科の専科も担当していた担任の先生がこの話を子どもたちにしていました。この問題を追及されていた阪大の菊池先生が新聞紙上などで大きく問題提起して、同志社女子大教授の左巻健男先生が『水はなんにも知らないよ』という本を出版され、この問題がちょっとだけ世間に知られるようになりました。
(すみません、長くなったので2分割します)
ちなみに、息子が中学の時に使っていた理科の教科書の巻頭カラーページには、中谷宇吉郎博士の「雪の結晶の研究」が詳細に記載されていました。なぜ教師が、中1で習うような科学のこんな基本的なことを理解してないのか不思議です・・・日本の科学教育の成果でしょうか(苦笑)
長文、失礼しました。
去年から時々このブログを読んでいます。
娘@小6の数年前の担任の先生(定年前のベテラン)が「水からの伝言」の信者でした。
以前から「水からの伝言」の話は知っていた(専門は異なりますが一応科学に関する仕事をしています)ので、資料を提示して冷静に科学的根拠の無いことを説明し、穏やかに改善を求めました。
しかし、担任の先生(翌年定年退職)の対応は逆切れ(モンスターペアレント扱いで非難)、校長先生(翌年定年退職)も事なかれ主義の対応で、他の保護者に話しても「ありがとうって言った方がきれいな水になるんでしょ。」な反応。
この状態で地元中学に進学する不安を感じて中学受験させることにしました。(中学受験するのは学年の1割未満という地域です。)
小学校なので担任の先生から「反抗的だ」と成績を悪くつけられても受験できますが、中学で似たような話を聞くと内申に響くので…
山本弘(著) 「ニセ科学を10倍楽しむ本」楽工社 (2010年)
という本でも「水からの伝言」を取り上げているので、参考になるかもしれません。
そうなんですか…そりゃずいぶん、浸透してしまっているんですね。
私、最初うかがったときにはもっと単なる「イメージ」のものかと思って、ほらたとえば、ピアノを弾くときに、「恋人に語りかけるような」イメージを持って弾くとか、「噴水の水が細かくきらきらと散っているような」イメージで弾くとかするとほんとに聞く人にもそう聞こえたりとか、あるじゃないですか。そんなふうに、きれいなイメージで言葉を使って、いいコミュニケーションをしようね的なものかと想像してしまいました。
ほんとに、水の結晶がそうなると思っていたり、あるいはそうなる「から」挨拶をちゃんとしようと思うとかだったらそりゃ寒いですね…っつか○○過ぎますね。
小学校の先生の仕事・専門性が多岐にわたっているからたいへんだと思いますけど。小学校の中もチームというか組織なんだから誰かとめろよとは思いますね。
しつけをするのに何もエセ科学の力になんか頼らなくてもねぇ。親のいうことだって、科学や宗教の後ろ盾はないけど全身全霊こめて「よそはよそ、うちはうち!!」っていえば済むことじゃないですか(笑)
コメントありがとうございます。その、TOSSとかいうところ、ずいぶん大きな影響力があったようですね。
教材や教え方のノウハウは、ひとりひとりの先生がすべて生み出そうとしても間に合いませんから、共有できるのはいいことだと思いますが、共有するならマトモなものでお願いしたいですね。
> 『水はなんにも知らないよ』
(^^;;
ほんとにね。
改善を求めたのですね!! それはほんとにお疲れ様です。一度聞けばオイオイってくらいの明らかな内容でも、信じる人ってほんとに疑問を持たないので、「やんわり」言うくらいじゃなにクレームされてるかわからないんでしょうね。
ゲーム脳の話で学校側と戦った川端裕人氏の記録
http://ttchopper.blog.ocn.ne.jp/leviathan/2006/04/post_fc55.html
を見て、いやーこりゃたいへんだと思いました。
> 山本弘(著) 「ニセ科学を10倍楽しむ本」楽工社 (2010年)
おもしろそうですね(^^;;
我が家の中2息子は国立小卒ですが、
この息子が小3年の時、
総合授業でこの水の話を実践しましたよ。f^_^;)
結晶ではなく、植物にアレンジしてまして。
なんかの植物を栽培したんですが、
「たくさんお水飲んで大きくなってね。」
と声かけして水やりする班と無言で水やりする班に分かれて栽培しました。
【無言班】の息子たちは水やりそっちのけで遊んで見事に枯らしてしまいました(笑)
「ほらね!」と先生はおっしゃったのですが、
「それは僕らがサボったからなんだけど、わざわざ怒られるのもなんねぇ。」
と言うことで息子たちはだんまりを決め込んだそうです。
他の無言班は普通に育っていたんだけど、先生、そこはスルー。
肥料や水やり回数や日光照射の差をつけて、
丹精込めて育てるのとそうでないのとの違いを実践させるならアリですが、
声かけの有無の違いの実践だったのでたまげました。f^_^;)
むかーし読んだ「カラマーゾフの兄弟」の中で、
次兄イワンが 「神がいなければ 道徳がない。道徳がなければ 何をしてもかまわない。」と言っていたのを思い出します。
「挨拶をしよう」「ゲームのしすぎはよくない」この程度の道徳でも ただ いけないというだけでは 1人1人個人の主体的な感覚になってしまうので いくらでも反論がありうる。落ち着きが悪い。
宗教があれば 神様がこうしなさいといっているから…というのが 確たる道徳の根拠になるわけですけど、
それがないから 代わりになるものとして 科学(とはいえないけれど)を持ち出すんじゃないかという気がします。
○ウム事件でも 理系の高学歴者が多くかかわっていて 驚きましたよね?
問題は 科学知識の欠如にあるわけではなく、
別の要因じゃないかと 思います。
エセ科学にすがりたくなる原因があるような気がします。
ちょっとやそっと教え諭しても、長時間のゲームや、挨拶ができない、酷い言葉を使う、夜更かし、朝ごはん抜きなどの良くない習慣から抜け出せない小学生が多かったですから。各家庭の問題だと切り捨てられればいいですが、生徒全員の考え方、行動を変える方法として、「頼ってしまった。乗っかってしまった。」というのもあると思います。
ゲーム脳も水からの伝言も、中学生では全く話題にも出ないので、小学生の時だけの一過性のもののような気もしますが、こう教えられた子たちの影響がどう出るのかは、正直わからないです。
私は日ごろ、「そういう事をすると罰が当たるよ」とか科学的根拠のない言葉をよく使うので^^;色々考えさせられる話題でした。
いやまぁ、水と違って、植物は生き物だし、そりゃ丹精こめて育てりゃよく育ちますね。声かけはともかく(^^;;
水をやらないと育たないということが、その実験によってわかりましたね!!
なかなかすごいなぁ…総合的学習の時間…
道徳なんぞに確たる根拠を求めると、ロクなことになったためしはないですね~
> 問題は 科学知識の欠如にあるわけではなく、
> 別の要因じゃないかと 思います。
そうですね。オウムに出家しちゃった、灘出身のクラスメイトは、十分に理科の勉強はしてて点とか取れたはずよね。でも、それと、ダマされないマインドってまた別なのかもね。つまり、そのへんすっぽり抜けてても点はとれる学習方法ってのはある、というか。
いやほんとに小学校の先生は大変だと思いますよ。
「ゲーム脳」の話をしたのも、人間的にとても尊敬している先生だったので、気の毒でとてもつっこむ気にはなれませんでした(^^;;
「バチがあたるよ」とか科学的根拠のない(?)話をするのは別にかまわないと思います。問題なのは科学のフリをすることでしょう。
科学とえせ科学の見分けはきちんとつくようになって義務教育を修了させてやりたいですけどねぇ…じゃないと高いふとんとか壷とか買っちゃいそうじゃないですか(^^;;
朝ごはんのコーヒーが丁度いい温度になる。
お弁当にごはんにふりかけがかかってくる。
一品おかずが増える。
家を出るとき、「行ってきます」と手を振ると、自分が道を曲がるまでドアが閉まる「ばたん」という冷たい音を聞かずにいける。
ふしぎだなぁ~?
お父さんは、それを知っているから、水の結晶見たいな単純なものなら、それこそ、きれいになっちゃうと思うよ。
と、うちの旦那なら言うと思う。。。
人の気持ちの作用反作用の研究は、もっと科学的にしなくてはなりまっせん(笑)
それを授業中に「事実」として言ったら、先生の権威が失墜しても仕方が無い気がします。
(ちなみに「水の伝言」というのは、初めて聞きました。)
>もうそりゃ、水に言うより家族に言おう、いい言葉。
爆笑しました!確かにその通り。
私も奥さんに「いい言葉」を言うように心がけます。
仕方がない、いうてもやっぱり失墜してほしくはないので、家で否定するにしても、特に低学年だと苦慮しますよね。だいぶわかるようになってくれば、これはこれ、それはそれみたいなこともできなくはないけれど。
> 私も奥さんに「いい言葉」を言うように心がけます。
(^^)